「美女と野獣」はメインストーリーが恋愛の作品。
メインストーリーとは別にサブストーリーで恋愛を扱う物語は多いけど、
メインに恋愛がくる作品も多くて、恋愛は創作を考える上で欠かせない要素だなと思う。
ロウソクの役(ルミエール)の人、どっかでみたことあるような、と思って調べたらライオンキングのティモン!
四季はキャストに注目して鑑賞しないように(物語自体を楽しむように)心がけてるけど魅力的な人は覚えてしまう。岩崎晋也さん。
今回のキャストで一番好みだったのはガストン役の金久烈(キムグヨル)さん。
調べたらリトルマーメイドのトリトンだった。
ウソでしょ!?
何度も見たしリトルマーメイドの中ならトリトンが一番好き!
それにしてもあの威厳あるトリトンとバカ愉快なガストンって…同じ人が演じるの…?本当に?
そろそろ本編。
ベルは本が好きなだけで変わり者扱いされている。
年間100冊以上の本を読む私としては他人事ではなかった。(数えてないからわからないけど3桁はいってる)
村人たちによると「女が本を読むのはおかしい」らしい。
男尊女卑の批判か…とちょっと気が重くなりかけた。
娯楽はこういうこと考えずに楽しみたい。
けどそんなに主張強すぎなかったので好ましい匙加減だった。
前半で好印象だったのはガストン。
ガストン役、とにかく身体作りがすごい。
恵まれた長身にぱつぱつ衣装に映える筋肉。
コミカルで愉快なキャラクター。ディズニーらしい。
村人たちが入ってきてみんなで踊り始めてもセンターで存在感を発揮し続ける。
もうガストンが主人公なんじゃないか?と思えてくる。
ところがさすがの野獣。
第一幕の終わりに独唱するんだけど幕間入った瞬間会場がざわめいた。
ロングトーンが人間業じゃなかった。
第一幕で出番が少ない分、この歌が見せ場らしい。
ちゃんと主人公だった。
他の脇役も魅力的。
魔法にかかった召使いたちが無機物になってしまう設定が面白いと思う。
少しずつ無機物に近づいていき人格を失っていくって怖い。
「人に施せなかった罰を受けるのは主人であって私たちは関係ない」
「いや、私たちにも責任がある。主人をあんなふうに育ててしまった」
という召使い同士のやりとりが興味深かった。
野獣になってしまった王子の年齢はベルと同世代とすると10代後半くらいだろうか。
姿がいかついので大人に見えてしまうけど、言動を見ていると彼はまだ未熟な青年なのだと感じさせられる。
野獣の思い通りになってやらないベルの生意気さは可愛い。
あと元気いっぱいなカップの子役も。
第二幕を見始めて改めて思ったけど、劇団四季の舞台はオーケストラまで豪華。
出演者を見るのもいいけどオケだけでも楽しめそう。
特にフルートとチェンバロってどなたでしょうか。
技巧的な演奏がすばらしかった。
ベルを喜ばせるために野獣はお城の図書館に案内してあげる。
図書館のある家、便利。住みたい。
文字の読めない野獣のためにベルがアーサー王伝説を朗読してあげて野獣が読書の楽しみに目覚める場面が良かった。
「本が好きだというとみんなには変わり者だと言われる。町にはみんながいるけど私は孤独」というベルの台詞が野獣に刺さる。
この場面でベルの孤独に寄り添えるのは野獣だけなのだとわかる。
孤独という共通点のために2人は惹かれ合う。
…しかしベルの読書趣味といえばミステリやロマンスなどかなり「陽」である。
どう考えても私の読書趣味の方が「陰」なのでベルが変人扱いされる村なんか顔を晒して歩けない。
陰すぎ読書女と野獣のお似合いカップルとして起伏なきハッピーエンドを迎えられそう。
野獣に拒否されなければだけど。
それはそうとベルは歌が素晴らしく上手でした。
でも歌上手い美女が変人扱いってどんだけ本に厳しい村なんだよ。
ベルを愛することを知ったからこそベルにとって一番の幸せを考えられるようになった野獣。
自分の恋の成就よりベルと父の再会を叶えてやるところに成長を感じる。
ところがこれが「ベルと結婚するために一旗あげよう」というガストンの思惑に結びつき、
ガストンもベルの父も村人たちも野獣を討伐しようと城に押しかけてくる。
物語のカラクリがよくできているなと思う。
第一幕でベルの仲間だったお父さんやガストンが敵に回るのが面白い。
「2人の恋は叶わないかもしれない」という状況にしっかり落としてからのハッピーエンドなので感動も大きい。
そして最後に来ると思ってたキスシーン。
意外だったのがちゃんと観客に見えるようにしていたこと。
簡単には見せてもらえないだろうと思ってオペラグラス持っていってガン見してたけど普通にしてた。
ダンスの振りに組み込む投げキス程度で照れて「酒飲んできて」と指導されている私にとっては「プロすごい」の一言に尽きる。
野獣蘇生の場面ではキスでよみがえらせると見せかけて普通に外してたので
(照明も暗いし観客にはよく見えないもんね。私はオペラグラス使ってるから知ってるけどね)
と思ったけど照明ばちばちに明るいフィナーレで堂々とキスしてた。
頬に手を当てて口元隠すとか顔を傾けて客席からは後頭部で見えないようにするとかそういう小細工もなかった。
これが劇団四季か…さっきは本当すみません…プロに拍手…と思った。
芝居でそれできる気がしないよ…。
「美女と野獣」には「人を見た目で判断してはいけない」教訓めいた話という印象があって、
ルッキズム批判を主軸にしているのかと思ったけど野獣は最後イケメン王子になる。
なんでだろう。皮肉?
ベルは醜い野獣の心を愛したわけだし姿は野獣のままでよかったのではないか、
どうしてイケメン王子に戻る必要があったんだろう?と思った。
醜い姿であることを理由に城に入れてもらえなかった魔女による「お前も見た目で判断されるつらさを知れ」という罰だったから?
十分知っただろうから許してあげる、という話なら子どもを安心させる童話として王道のようにも感じる。
本来あるべきでない姿にされてしまってたわけだしね。
あと細かいかもしれないけど照明の使い方が上手かった。
照明専門の人がいるんだろう。
ぼやけた三条の光が左右から斜めに入るやつとか舞台上の主要人物を照らす調整とか前方のフラッシュとかいろんな技術を駆使してるんだなと感心した。
あーできることならひとりひとり取材したい。
あの舞台を作った人たち全員どんな人生を辿って今日にたどりついたか聞いたら壮大なドラマになるだろうな。
いろんな媒体でいろんな作品を鑑賞して思うけれど、ミュージカルは芸術の結晶という感じがする。
物語・芝居・ダンス・歌・オケ・衣装・小道具・演出方法どこを見ても芸術芸術芸術。
だから本を読むより構えて鑑賞しなければならない贅沢品という感じがする。
それが好きすぎて結局自分でも踊るようになってしまったんだと思うけど、舞台見てて
「この前やったステップだ!」みたいなのが出てくると結構嬉しい。
自分のとは比べものにならないくらい洗練されてるってわかるところも含めて面白い。
金属製のカップをみんなでぶつけあうダンス、あれ合わせるの大変そうだけど絶対楽しいだろうな。
また観に行く。
貢ぐからDVD発売してください。(切実)
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