ミュージカル「天使にラブソングを」を観て

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絶対当たり役なので森久美子さんのデロリスは観たい。

あと石井一孝さんの歌が好きなのでこの2人の組み合わせで観たかった。

石井一孝さん歌だけじゃなくてダンスとお芝居まで上手い。

かっこよすぎ。

 

まず「天使にラブソングを」の原作が好きすぎる。

映画は金曜ロードショーで放送してたものを子供の頃に観たと思う。

一番好きなのはロバートだった。

ということでロバートには思い入れが強すぎて舞台で観ても「イメージと違うな」と思ってしまった。

これは仕方ない。

私にとってロバートは幼少期の頃からナンバーワンの歌姫なのだ。

ところが第2幕のロバートのソロで号泣することになる。

全然違うロバートのはずなのにこれはこれで素晴らしかった。

いったん置いといてあらすじから。

 

まず原作版。
リノのクラブで売れない歌手をしているデロリスが主人公。
愛人はクラブの経営者でマフィアのボスであるヴィンス。
デロリスはある夜、 ヴィンスが部下を銃で撃ち殺すところを見てしまう。


警察に駆け込んだデロリスは警部(エディ) にヴィンス逮捕のために協力してほしいと言われ、 裁判の日まで身を隠すことになる。
デロリスが隠れることになったのは修道院だった。
派手で俗に染まったデロリスが厳格なカトリック修道院でシスター のふりをすることになる。
このギャップが面白い。


さて、当然デロリスは修道院の生活に耐えられない。
修道院長との仲は険悪、 修道院の生活なんか耐えられないと何度もエディに訴える。
しかしそんなデロリスに優しいシスターもいる。
パトリックとロバートだ。
二人の優しさがあるためにデロリスは修道院に対して完全に心を閉 ざさない。


規律を重れないデロリスに修道院長は試練を与えることにする。
下手すぎる聖歌隊の指導役を命じたのだった。
聖歌隊にはパトリックもロバートもいた。
デロリスは頭を抱える。
パトリックは歌声が大きすぎるし、 ロバートは全然声が出ていない。
他のシスターたちも下手なのだ。
ところがさすが歌手のデロリス。
聖歌隊を指導するとシスターたちはめきめき上達していった。


日曜日のミサ。
聖歌隊が歌い出すと修道院長も神父さまもびっくり!
あの聖歌隊が素晴らしい声で歌い出した。
指揮はデロリスだ。
修道院長は一瞬デロリスを見直すが、急に転調。
聖歌をポップに編曲したものを聖歌隊がノリノリで歌い出す。
修道院長は唖然とするけど神父さまは楽しそう。
ガラガラだった教会には音楽を聞きつけて若者が入ってくる。
「敬虔なカトリック信者が減った」 とぼやいていた神父さまは聖歌に導かれて柄の悪い若者が教会に入 ってきてくれたことが尚更嬉しい。


修道院でデロリスが受け入れられていくほど修道院長の居場所はな くなっていく。
この対比は切ない。
修道院を守らなければならないという修道院長も、 近隣の人々のために教会をひらくべきだというデロリスも両方正し い。
それでも賛同されるのは長く修道院を守ってきた修道院長ではなく 新入りのデロリスなのだ。
この時の修道院長の孤独の表現も上手い。
ある日、デロリスはエディから「 裁判の日がはやまったので修道院を出てほしい」と言われる。
あれほどまでに願ったはずの日が来たというのにデロリスは嬉しく ない。
同時期に修道院長は修道院を去ろうとしていた。
デロリスは「自分が出ていくから」と修道院長を引き止める。
相いれないはずの二人の関係性が少しだけ変わっていることがわか る。


デロリスがヴィンスの部下に誘拐されると、 修道院長はデロリスを救出するためにシスターたちを率いてリノの クラブに乗り込む。
ヴィンスがデロリスに「聖職者になったのは服装だけ」 と言って銃を向けた時、 修道院長は声を張り上げてそれを否定する。
ヴィンスは修道院長の「彼女は立派な修道女です」 という言葉を聞いて引き金をひくのをためらった。
悪役にも神様がいるのだ。
ここすごく深いと思った。
その隙をついてエディがヴィンスに発砲。
ヴィンスは逮捕される。
捨て台詞を吐くヴィンスをデロリスが呼び止める。
何かひどい言葉を言うのでは、 というシスターたちの緊張が走る中、デロリスは言う。
Bless you.
こんな完璧な構成ある?


後日、聖歌隊は法王の前で聖歌を歌うことになる。
もちろん、デロリスが指揮するノリノリの聖歌だ。
満杯の教会。
法王のスタンディングオベーションで終わる。


以下、原作とちょっとだけ違う舞台版。
舞台版ではエディのキャラクターが原作よりコミカルになっている 。
警部なのに銃を扱うことが怖いという設定だった。
またデロリスとは高校の同級生で、 いじられキャラだったエディは歌の上手いデロリスを密かに慕って いた。
舞台版のオリジナル要素も面白い。
全体的に成長物語としての色が濃くなっている。
エディはデロリスを守るために発砲し、ヴィンスの逮捕に成功。
「いい子」で過ごしてきたロバートは「デロリスは歌わない」 という修道院長に「一緒に歌いたい」と自己主張をする。
修道院長はデロリスに出会って考え方のまったく違う人間を受け入 れることを知る。
いうまでもなくデロリスは修道院での生活を通して人として成長す る。
そしてサブストーリーとしてデロリスとエディの恋が実る。
なんて贅沢なエンタメ!
これを上質な歌・ダンス・お芝居・ 舞台セットで上演するんだからチケット代1万円じゃ安すぎる。
すごくよかった。

あと修道院長が原作のイメージ通りすぎた。

歌まで上手いんだから本当すごい。

と思ったら宝塚の元トップスター鳳蘭さんだった。

どーりでお芝居から歌まで最強に上手いわけだ。


最後に。
第2幕のロバートのソロで涙が止まらなかった。
私は10代の頃に規律の厳しいミッションスクールに通っていて、 ロバートがその頃の自分に重なった。
「 指輪もつけてみたかったしドレスも着てみたかったし男の子と恋を してみたかった」 と歌うロバートが私の心の一番深いところに触れてきた。
それでもロバートは修道院の壁の中にいることを望む。
それくらい何かを愛している。
それは神さまだったり、他のシスターだったり、修道院だったり。
その純な気持ちが痛く刺ささる。私に。
そうだ、私はあの窮屈なミッションスクールが大好きだった、 そんな気持ちを思い出さずにはいられない。
ロバートの衣装が私の通っていたミッションスクールの制服にそっ くりだった。
私はあの制服を着ていた間、 シスター見習いみたいな存在だったのかもしれない。
そんな魔法の時間はもう10年以上前に消えてしまった。
私にも、ロバートのような少女時代があったのだ。
苦しくて輝かしい時間だった。
戻れるならもう一度見たい日常で、 だけど永久に失われてしまったからこそ日々輝きを増す思い出でも ある。
そんな宝物が私の中にあるということを自覚させられる素晴らしい 舞台だった。


カーテンコールでダンスの振付を教えてもらって観客もみんなで踊 るのも盛り上がった。
観客のノリがいい舞台ってめちゃくちゃ楽しい。
ムーラン・ルージュ」 もノリよかったけど踊れるからそれ以上だった。
ダンス習ってるのに振り覚え悪いから私はめちゃくちゃに踊ってた けどめっちゃ楽しかった。
また行きたい。

Dancing☆Star プリキュア The Stageを観て

10/29(日)13:00開演@品川プリンスホテル ステラボール

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なんと登場人物全員男子のプリキュアである。

男子のプリキュアがアニメに登場したとだいぶ前に聞いて「時代だな〜」と思ったけれど、なんと舞台化。

https://www.marv.jp/special/precure_stage/

 

面白かった。

思ってた以上に面白い。

プリキュアファンでもないしペンライト持って応援みたいなオタ活にも割と引いちゃうタイプだから心配だったけど楽しかった。

ストーリーも面白いしいろんな種類のダンスが観られる。

早く帰って踊りたい。

 

とりあえずネタバレ含むあらすじ。

ダンス部の高校2年生の星河はある日、追われている妖精(パドドゥ)と不気味なダンサーに出会う。

パドドゥを助けようとしたところプリキュアに変身!

ダンサーを追い払うことができた。

パドドゥは「希望のスコア」を完成させて願い事を叶えるためにこちらの世界でプリキュアを探しているという。

そのプリキュアの一人が星河だった。

後に星河の幼馴染の夏目もプリキュアになる。

二人はダンス部で全国大会を目指しているが、パドドゥによると二人の先輩である月宮と天弦は以前からプリキュアとして「絶望の組織」と戦っているらしい。

プリキュアとしての戦闘力はダンスの技量とセンスに比例する。

そういうわけで月宮と天弦は、星河と夏目がプリキュアとして戦うことを反対するのだった。

月宮と天弦にはかつて優秀な後輩プリキュア(元ダンス部の黒瀬)がいたのだ。

その後輩との関係修復が難しい状態なので未熟な2人を心配しているらしい…。

面白いのは5人ともそれぞれ得意なダンスジャンルが違うところ。

ヒップホップ、ロックダンス、ソウルダンス、神楽、ブレイクダンス

私が好きなのは元ダンス部の黒瀬(キュアブレイク)。

なぜ黒瀬はダンス部を、プリキュアをやめてしまったのか?というところから、この物語のサブストーリーが展開する。

黒瀬はブレイクダンスの天才であるためにプリキュアとしての戦闘力も高かった。

それゆえに連携が苦手でひとりで突っ走ってしまう。

天弦と協力できなかったためにバスケ部のルーキー内海(うつみ)に選手生命にかかわる怪我を負わせてしまう。

責任を感じた黒瀬はプリキュアでいることもダンス部員でいることも嫌になってしまったのだった。

内海には同じバスケ部で幼馴染の鈴ノ木がいる。

2人の関係性は主人公格の星河と夏目に呼応するのだ。

(エンタメのサブストーリーは恋愛が王道だけど、こういう友情ものもあるんだ…)

才能はあるけど怪我でもうバスケができない内海と才能はないけど努力していて内海の代わりにレギュラーになれた鈴ノ木。

2人が互いの葛藤を乗り越えて再び強い友情を結ぶ時、星河と夏目も友情を深めている。

星河がどこまでも明るく前向きで主人公らしいキャラクターなのがよかった。

室井(悪役)にプリキュア4人が捕まってピンチになったところでキュアブレイクがプリキュアに復帰し助けに来るのもお約束すぎて気持ち良い。

 

ただ、パドドゥの願いはなんだったのか、かつてバレエをともに踊ったパートナーは誰だったのかという伏線は回収されない。

もしかして室井がパートナーだった?

パドドゥの願い事は「室井がもう一度バレエを踊ってくれますように」じゃないかな?

エンディングでパドドゥが室井と2人でバレエを踊るんじゃない?

と思ってたけどさすがにそれはなかった。笑

 

一番好みだと思ったキャストは室井役の伊藤裕一さん。

初めて登場した場面から「演技うま!ダンスうま!」で目が忙しかった。

演技に熱が入りすぎると2階席にいても「若干うるさい」と感じるので声量が半端ない。

悪口っぽくなったけど2階席にいてそこまで感じるほどの声ってなかなかないのでびっくりした。

調べたらまだ39歳らしい。どうりで。若いな。

あと20〜25年くらい経ったら声に深みが出てさらに好みになりそう。(自分の方が年下なのに何様)

 

妖精のパドドゥも面白かったし、全然書けてない人たちもみんなよかった。

ダンスってやっぱり観ると元気もらえる。

私も習い始めてよかった。

お風呂で身体あっためたら今日も踊ろう〜〜!

映画「君たちはどう生きるか」をみて

さっそく見に行ったので感想。

本当によかった。

村上春樹の世界観っぽかった。

良さがわかるのは私が普段読書をするからかもしれない。

エンタメに慣れすぎてる人には深読みできないだろうから賛否は分かれそう。

 

以下ネタバレ。

完結にいえば「行きて帰し物語」。

母を失ったことで心を閉ざしてしまった少年眞人(マヒト)が異世界を旅することで人に心を開く力を取り戻す成長物語。

 

火事で母を亡くしたことで心に深い傷を負ったマヒト。

ある日、父が再婚して田舎の屋敷に引っ越すことになる。

再婚相手は母の妹夏子(ナツコ)で、ナツコはマヒトの弟を妊娠している。

ナツコが母に似ているからこそ、父がナツコを本当に愛しているからこそ、ナツコが妊娠を喜んでいるからこそ、マヒトは優しいナツコを母として受け入れられない。

マヒトの苦しみは鋭利に研ぎ澄まされて攻撃性を帯び、それは自分自身に、そして屋敷に現れるアオサギに向けられる。

マヒトは悪意を持って自分を傷つけ、アオサギを殺そうとするのだった。

ナツコはもちろんマヒトに対して穏やかでいられない。

大事な姉の息子をこんなにも大事に思っているのに気持ちが伝わらない。

自分はマヒトの母にはなれないのかもしれないと苦しんでいる。

 

そんなある日、ナツコが失踪してしまう。

マヒトはナツコが屋敷の森に消えていったのを偶然見ていたため、屋敷のお手伝いの1人キリコと共に森へ入っていく。

ここ、秀逸なのが、マヒトは読みかけの本を残して部屋を去るところ。

「頭の狂った大叔父が読みかけの本を残して失踪した」話をたどるので(何が起こるのだろう…)とぞっとする。

森の奥には古い塔があった。

それはアオサギが「おいでませ」と誘っていた塔である。

アオサギがいうには、マヒトの母は実は死んでおらず、塔の中で会えるという。

マヒトはキリコと共に塔の中の異世界へと踏み出す。

 

異世界に来てから、マヒトはどれだけ屋敷のみんなに大事に見守られていたかを知る。

キリコだってちゃんとマヒトの味方だったのだ。

ある夜、マヒトは人間の赤ちゃんになるというワラワラが天に昇っていくのを見る。

そのワラワラを食べるのはペリカン

ペリカンを殺すのは炎使いのヒミ。

時間がぐちゃぐちゃに混ざったこのファンタジー異世界には独特の食物連鎖(?)があるらしい。

ヒミはペリカンもワラワラもろとも殺してしまう。

しかし一部生き残ったワラワラは天に昇っていく。

キリコは「ヒミがいなければ全てのワラワラが犠牲になったからこれでいい」という。

ペリカンは「地獄だ」と語る。

ファンタジー異世界のはずなのに、残酷な部分は現実と同じなのだ。

 

この異世界でインコは人間を食べるらしい。

鳥を殺すために刃物を研いでいたマヒトは、鳥から刃物を向けられることになる。

ここにも現実的な真理があると思う。

マヒトのことを救うのはヒミ。

ヒミはマヒトの母の少女時代の姿をしている。

母を失い苦しんでいたマヒトは「死んでしまいたい」と思っていたのではないか。

しかしヒミはマヒトを産むために元の世界に戻るのである。

マヒトは「そんなことをしたら炎で燃えて死んでしまう」とヒミに告げる。

マヒトは自分が産まれないことで母を守りたかった。

しかしそれでもヒミはマヒトを産みたいと答える。

これはマヒトが生まれ直す物語だ。

母の愛に触れたマヒトは元の世界に戻り、異世界でみんなを信用できたように、今度は現実世界でみんなと人間関係を築いていこうと決めるのだった。

 

マヒトの母(ヒミ)は死んでいなかったのかもしれない。

炎を通して異世界に戻ってきたのではないか。

少女の姿だったのは、ヒミが少女時代に一度異世界を旅したからだろう。

時間がぐちゃぐちゃになった世界。

元の世界に戻ったヒミとキリコはマヒトのことを覚えていない。

しかしヒミもキリコも未来でマヒトと再会することになる。

それをマヒトだけが知っている。

 

マヒトもいつかはこの世界に帰ってくることになるかもしれない、と思ったけど、世界は完全に壊れてしまったんだった。

マヒトはもう逃げることなく現実を生きていくしかない。

でもマヒトにとっての現実は、異世界に行く前と比べて、希望のある世界になっただろう。

 

2度目を見て思ったこと。

キリコは異世界の住人だったけれど、ヒミと共に現実世界にきて、そのまま現実世界の住人になったのかな。

マヒトの母は炎を通して異世界と現実世界を、過去と未来をループしているんだと思う。

マヒトに「助けて」と言ったのは「ループを解いて」という意味だったと解釈した。

良い作品だった。

結局4回見た。

新作歌舞伎「刀剣乱舞 月刀剣縁桐(つきのつるぎえにしのきりのは)を見て

ネタバレ含む感想。

刀剣乱舞知らないし歌舞伎も初だけど行ってきた。

小説書くのに刀剣のこと結構調べたのと、剣舞の稽古に少し通ったのでプロの剣さばきを見たかった。

歌舞伎もそろそろ入門したいなと思ってた頃だし。

 


結論、めっちゃ面白かった。

歌舞伎でワイヤーアクションってあるんだ。

フォグをたいて細い光を多く使うから舞台に奥行きが出る。

琴も笛も琵琶もいい。

あんな力強い音出るものなんだ?

イヤホンガイドの解説もわかりやすくてよかった。

ジャパニーズミュージカルて感じ。

歌ありダンスありで物語筋も深みのあるエンタメ。

えっ、歌舞伎役者ってみんなあんなイケメンなの?

しかも親しみやすい感じだし想像と違った。

とてもよかった。

 

観る前に刀剣乱舞について調べた。

どうやらゲームらしい。

刀剣の付喪神(刀剣男士)をコレクションするゲーム。

プレイヤーは審神者(さにわ)として刀剣男士をつかい、歴史修正主義者と戦う。

過去を変えようとする悪役がいて、それを阻止するゲーム。

プレイヤーである審神者は刀剣男士を過去に送り、悪役と戦わせる。

たぶんそんな感じ。

違うかな?

この歌舞伎では観客を審神者に見立てる。

ええー、面白そう。

 

以下、内容。

主人公は三日月宗近(みかづきむねちか)という刀剣男士。

歴史修正を阻止するため室町時代にタイムスリップすることになる。

彼にタイムスリップを命じるのは私たち観客(審神者)という演出。

まさかの参加型。面白い。

歴史修正主義者は永禄の変の歴史を変えようとしている。

つまり足利義輝(あしかがよしてる)を生かそうとしているらしい。

そのために義輝を暗殺した松永弾正を殺そうとしている。

宗近は暗殺事件を起こす弾正を守らなければならない。

そんな宗近を支える仲間の刀剣男士は5人。

小狐丸、同田貫正国、髭切・膝丸(兄弟)、小烏丸。

ところが宗近には何やら思うところがあるらしい。

実は名刀宗近、初めの所有者は義輝なのだ。

宗近にとってこの任務は、主人の暗殺を見守ること。

タイムスリップで主人に再会した宗近は主人に気に入られ「臣下になってくれないか」と頼まれる。

しかし受け入れるわけにはいかない。

それでも宗近は「見守りたい」と答えてしまう。

仲間の5人からは非難の目。

葛藤の生まれる設定が良い。

 

さて、歴史修正主義者とは別にもう一派悪役が現れる。

異界の翁と嫗だ。

2人は異界の魔物の力で若返り、義輝に近付いて邪悪な存在にしようと試みる。

「魔術で悪人となってしまった義輝を殺さなければならない」と宗近は弾正の息子に語る。

暗殺者は弾正であり、この歴史を修正しようとしている者がいて、未来を変えないために自分はタイムスリップしてきたのだと打ち明ける。

弾正の息子(松永久直)はこれを受け入れ、父に暗殺を頼むことを決める。

しかし父はとても忠義に厚い侍。

主人を斬ることができるだろうか…?

父を説得するにあたって久直は切腹をする。

息子の覚悟を知った弾正は義輝を暗殺しようと心に決めるのだった。

宗近は歴史修正の阻止のために払われる代償の大きさを思い知る。

 

義輝に最後の一撃をくわえることになるのは宗近だ。

義輝は宗近に討ち取られるのなら本望だという。

宗近と剣を交えながら、義輝は、宗近が自分の愛刀の化身であることに気付く。(もっと前からわかっていたのかもしれない)

義輝は宗近に愛情を伝えて息たえるのだった。

 

いや、刀剣乱舞も歌舞伎も知らないけど、最後の場面本当に泣きそうになった。

もしも刀に心があるのなら、やはり刀を愛する侍とは特別な絆を結んだろうという日本人独特の感性に働きかけてくる。

 

という感じでストーリーが充実してて面白かった。

歌舞伎の舞は初めて見たんだけど、なんかジャズダンスに似てるなって感じた部分があったのが自分でも意外だった。

先生が「身体での表現方法は多種多様だけど身体はひとつしかないからダンスには普遍性がある」みたいなこと言ってたの思い出して、そういうことか〜!と思った。

膝の角度とかは全然違うんだけど全体の形はバレエの二番ぽいなとか、これターン・アウトじゃん、みたいなのが歌舞伎で観られたのが面白かった。

 

剣舞の稽古を少し受けたからわかるけど、模造刀をあんなにしなやかに振れるなんてすごい。

とんぼ返り初めて見た。

刀で足払いとかそれをジャンプでかわすとかは稽古で実際にやったことがあったのでこういう場面で使うんだ〜!?って感動した。

同じことやってる!!

私がやっても(えっ?何これ?私滑稽じゃない?)って思いながらやってたけど、プロがやるとかっこいいな!!と思った。

 

歌舞伎役者「かっこいい」と思わずにはいられない。

普段の歌舞伎は年齢層高めなのか、若い女性の多い刀剣乱舞ファンから屋号を叫ばれて歌舞伎役者のみなさんがすごい嬉しそうだったのがよかった。

また行きたい。歌舞伎面白かったな。

歌舞伎役者のみなさん親しみやすくて面白かった。

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好きだと思った小説

とりあえず直近のものだけ。

図書館で読んだけど自分でも買いたいやつ。

備忘録。

 

夢野久作「瓶詰地獄」

ジュール・シュベルヴィエル「海に住む少女」

井伏鱒二「屋根の上のサワン」

木下昌輝「おとぎ輪廻」

吉本ばなな「ムーンライト・シャドウ」

浅田次郎壬生義士伝

安房直子「春の窓」

シャルル・ペロー(村松潔訳)「眠れる森の美女」

村上春樹「めくらやなぎと眠る女」

ヴィクトル・ユゴー「ビュグ=ジャルガル」

村田沙耶香「無」

小川洋子「バックストローク」(「はじめての文学」収録)

岡本かの子「アムール幻想傑作集 美少年」

佐藤春夫「のんしゃらん記録」

 

 

再読したい

ヴィクトル・ユゴー「九十三年」

バレエシャンブルウエスト「LUNA」をみて

初のバレエ鑑賞。

まず「LUNA」のあらすじ確認。

①月にて

月の宮廷人とうさぎたちが登場。

彼らは「銀百合のしずく」を摂って生きている。

そこに登場するかぐや姫

苛立っていて銀百合を引きちぎり人々を蹴散らす。

帝(かぐや姫の父)に対しても反抗的。

そこで帝はかぐや姫を地球へ送ることにした。

帝はうさぎに短剣をたくし、かぐや姫を見守るようにいいつけて地球に送った。


②地球にて

かぐやは眠る幼児を見つけて触れる。

幼児は目覚め、代わりにかぐやが眠る。

うさぎたちは村人に変身。

竹取の翁と嫗(人形!)が竹藪で赤子を見つけ、育てる。

それがかぐやになった。

ある日かぐやのいる村に帝が通る。

2人は惹かれ合う。

かぐやの噂を聞いた4人の皇子たちが求婚してくる。

かぐやは「龍の持つ宝を持つ者と結婚する」と宣言。


③地球にて

龍の宝を獲得しようと求婚者たちは戦う。

しかし龍の手下に倒される。

一方、帝もかぐやに求婚。

かぐやは帝にも龍の話をする。

帝も龍の宝を狙うことに。

龍と戦う帝は劣勢になるが、かぐやから受け取った短剣で勝利。

(この短剣はかぐやの父がうさぎに与えたもの。うさぎがかぐやに短剣を渡した)

龍は宝を残して消える。

龍を操っていたのは…月の帝(かぐやの父)?

帝は竜の宝と共に銀百合の花を手に入れ、かぐやに銀百合の花を贈る。

かぐやはびっくり。

父の気配を感じ、月に帰る時期の近いことを悟る。


④地球→月へ

かぐやと帝の華やかな結婚式。

そこへかぐやの父が現れる。

かぐやは月に帰ってしまう。

かぐやを惜しむ帝と帝を惜しむかぐやの心情表現がみどころ。


いきなり俗説から入るんだ!?とちょっとびっくりした。

かぐや姫はそもそもなぜ地球にきたか?という問題は永く議論されている。

仮説のひとつが「月で罪を犯したから流刑された」だ。(月人にとって地球は流刑地という説)

どんな罪の償いのために地球に流されたのだろう?と考えて、私が初めに思ったのは「殺人だろうな~」だったけど、LUNAでは「花を引きちぎったり、人を蹴ったりしたから」という可愛い罪状だった。

ごめんなさい。

 

私には漢文の現代語訳をノートに記すという渋すぎな趣味があるため(これで日曜の朝起きてからの4時間が消失する)わかるんだけど、中国の思想って日本の物語に強く影響してる。

月に人がいる、宮がある、うさぎがいる、って発想は中国や日本だからある発想な気がした。

日本最古の物語である「竹取物語」をバレエで表現するって試みがまず興味深い。

 

バレエって初めて観るので観る前に図書館で1ヶ月間くらい調べたけど、イタリアで生まれてフランスで育ってロシアで大成したらしい。

銀行業で成功したイタリアの大財閥メディチ家のお嬢様(かの有名なカトリーヌ・ド・メディシス)がフランスに嫁入りした時にバレエはフランスに渡った。

バレエ好きなルイ14世が王立のバレエ学校を作って(中略)いろいろあってロシアでバレエ文化は花開いた。

つまり「LUNA」は東洋的物語を西洋的技術で表現する舞台なわけだ。

観たい。

…いつも通りに前置き長いな。

ということで舞台の感想へ。

 

これ導入が秀逸で、まず大阪交響楽団のみなさんの挨拶から始まる。

明るいところで演奏を聴き始めてクラシックコンサートに来たような感覚に。

照明が落とされ始めると舞台が近くなっていくような錯覚を抱く。

舞台が近付いてくるのに合わせて音楽もBGMになっていく。

物語の世界に引き込んでいく手法が巧みだと思った。

 

まず好きだったのは長耳(土方一生さん)と赤目(吉本真由美さん)。

2人組のうさぎ。

序盤から「リフトってこうなの!?」とびっくりした。

リフトって男性が女性を持ち上げるとは聞いてたけど、持ち上げられた赤目が両脚そろえて爪先を天に向けるとは思わなかったよね。

そしてこの技を支えた長耳、他の場面での踊りはとてもチャーミング。

特に第1幕3景のかぐやが帝に出会う直前、村人たち(実際はうさぎが変身した姿)のお祭り。

え?この人女性だっけ?と思って何度もオペラグラス覗くことになった。

パワフルなバレリーナとチャーミングなバレリーノの魅力的な組み合わせだった。


地球の帝(逸見智彦さん)も月の帝(佐藤崇有貴さん)もとても威厳があった。

バレエダンサーを見て「威厳がある」って感じることある?

台詞も歌もないのにそう感じさせる表現がすごい。

飛んだり回ったり持ち上げたり、バレリーノは力強く踊るものだとばかり思っていたけれど、想像してたよりしなやかで「これが男性のバレエなんだ!?」と思った。

かっこいいより美しいとか綺麗が似合う。

威厳あるのに。なんで?


龍のかしら(藤島光太さん)に拍手を送る時には会場に一体感があった。

踊り方はそれは安定感あってよし楽しませてもらうぞとみていられる。

帝との戦いの場面の直前、下手に透明の糸が落ちてきて、演出かな?と途中まで思ってたんだけど下手で龍を演じるバレリーナさんが転ばないように気をつけているのがわかって、どうやらミスらしいなと思った。

龍のかしらのソロの踊りに入っても糸の塊はそのままあって、これ大丈夫かな?と思う空気が劇場に漂ってた。(喋ってるわけでもないのに他のお客さんと心通じ合わせることあるよね)

踊り終わったあと龍のかしらが機転をきかせて回収してました。

拍手!!ここ気持ちよかった。一体感。

龍を演じたバレリーナのみなさんも(鈴木愛澄さん、崎田奈月さん、阿部美雪さん、西村まなつさん、太田奈々さん)めちゃくちゃかっこよかった。


龍を倒そうとする4人の皇子たちもそれぞれ個性的で良い。

剣の皇子(山本帆介さん)は日本刀を振り回す姿がかっこいい。

日本刀振り回すバレリーノっているんだ。

これのために殺陣の稽古とか受けたのかな。

刀の扱い方が上手い。

弓の皇子(早川侑希さん)は矢を持たず弓を弾くだけなのがシュールでよかった。

シュールなのになんかかっこいい。

弦を弾くのに作る腕の形が筋肉を強調するから?

客席からどう見えるかよく計算されてると思った。

力の皇子(バトムンク・チンゾリグさん)は岩を持ち上げる。

かぐやに求婚するにあたって岩を持ってきて力自慢をするというツッコミどころのあるキャラクターなのがおいしかった。

台詞なしでコミカルな表現をする。

思わず笑う。


そして初めて見たプリマ、かぐや姫(柴田実樹さん)。

何から書けばいいのかわからない。

美しかった。

ポアントのつま先で移動する優雅さとか1回の舞台でこんな何度もリフトされるものなんだとかびっくりするところはたくさんあったんだけど、一番好きだったのはやっぱり表現。

特に最後の月に帰ってしまうところ。

おじいさんとおばあさん(八王子車人形!)に寄り添い別れを惜しむ場面は「さよならが寂しい」より「育ててくれてありがとう」が強い表情でした。

でも帝との別れは「さよならが寂しい」が強かった。

同じ別れでも別れの対象が違えば違う表現になるということをよく考えて演技に反映しているのがわかる。

台詞なしでやるのがすごい。

それにこたえるように帝も悲痛な表情をしてた。

バレエは踊りの「動」と歌や台詞のない「静」を一体とした芸術なんだと思った。


後語り。

竹取物語かぐや姫が無理な試練を提示するのは「誰にも気がないから」なんですよね。

ここの前提をひっくりかえす(=帝に惹かれる)となると、そもそもみんなに試練を与える理由がなくなってしまう。

皇子たちのことは適当にあしらってさっさと帝と結婚すればいい。

…みたいなツッコミどころはどの舞台にもあるものだし特別欠点とは思わなかった。

恋愛は舞台映え抜群のテーマなのでこれを強調できるなら多少展開に辻褄の合わない部分があってもそれが逆に「味」っぽくなる。

小説だとそうもいかないのですごい。

舞台の魔力。あぁ好き。

くるみ割り人形もチケット取れたから楽しみ。

Musical Meets Symphony 2023 “DIVA”に行って

元娘役トップスター真彩希帆さんの歌声を聴きたかった。

念願叶って行ってきました。

DIVA(ディーヴァ)は「歌姫」

真彩さんのことだ。

ということで完全に真彩さん目当てだったけど新妻聖子さん、オク・ジュヒョンさん、キム・ソヒャンさんも歌姫に間違いなかった。

充実感がすごい。

 

指揮は太田弦さん。(若い指揮者だ…)

オーケストラは読売日本交響楽団

まず1曲目がオケだけなのがよかった。

曲はLA・LA・LANDよりAnother Day of Sun!

テンションあがる。

歌聴くと歌に集中しちゃうからオケの良さを堪能するのが難しい。

1曲目で「この素晴らしいオケが演奏するよ!」って主張してもらえたの嬉しかった!

 

キム・ソヒャンさんの英語かなり聞き取りやすかった。上手い。

真彩さんとデュエットで日本語でも歌ってたし言語得意な方なのかな。

ドレスも可愛いしフリートークも面白い!

魅力的な人柄が伝わってきた。

 

韓国語の歌を聞くのは人生初だったかも。

その人生初がオク・ジュヒョンさんの歌だったのはものすごく幸運なことなのかもしれない。

声帯切れない?大丈夫?ってくらいパワフル。

背景にミュージカルの幻覚が見えそう。

歌声で人間1人で世界観作っちゃうのすごすぎた。

ローズピンクのドレスも可愛かったけどパンツスタイルもセンスよくて会場もオクさんのファッションに注目している感じがあった。

私だけに(エリザベート)、レベッカ(レベッカ)あたりすごすぎてぽかーんだった。

 

真彩さんのポピュラーかわいい。

毎日のようにDVDで見ているかわいい真彩さんが本当に舞台に立ってて本当にかわいくて幸せだった。

細!白!かわいい!と思いながらオペラグラスずっと覗き込んでた。

宝塚時代から歌姫やってくれてて感謝。

かわいい。

 

新妻さんはLet it Go(アナと雪の女王)、夢破れて(レ・ミゼラブル)、オールウェイズ・ラヴ・ユー(ボディガード)など誰でも聞いたことのある名曲を熱唱してて、どれも文句なしに素晴らしいなと思わせる技量だったのがすごい。

鎖骨のあたりで立った鳥肌が耳から脳に侵入してくる。

良い歌声聞いた時になるんだけど、基本右脳だけ。

右脳って芸術の良さを感じるところだからかなっていつも思うんだけど、新妻さんの歌声左脳まで響いた。

プログラムを手に持ってたんだけど声による音の振動が紙にまできてたし。

1階席24列目。すごすぎない?

 

最後の4人の合唱もよかった。

物語性のある楽曲を日本語と韓国語で。

韓国のミュージカル観たくなっちゃったよ…。

海外遠征は私が手出していい趣味じゃないので耐える。(耐えられるのか?)

 

そういえば幕間でおばさま方が「オクさん今日調子悪いみたいね」って話してて(あれで!?調子が悪い!?!?)って思った。

4人とも素敵だったなぁ。

今と違う人生があるならオケの人か歌の人かダンスの人になりたい。

って、思える舞台を鑑賞できるのってありがたいですね。

この余韻に浸りながら帰れる時間、幸せ。