ミュージカル「天使にラブソングを」を観て

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絶対当たり役なので森久美子さんのデロリスは観たい。

あと石井一孝さんの歌が好きなのでこの2人の組み合わせで観たかった。

石井一孝さん歌だけじゃなくてダンスとお芝居まで上手い。

かっこよすぎ。

 

まず「天使にラブソングを」の原作が好きすぎる。

映画は金曜ロードショーで放送してたものを子供の頃に観たと思う。

一番好きなのはロバートだった。

ということでロバートには思い入れが強すぎて舞台で観ても「イメージと違うな」と思ってしまった。

これは仕方ない。

私にとってロバートは幼少期の頃からナンバーワンの歌姫なのだ。

ところが第2幕のロバートのソロで号泣することになる。

全然違うロバートのはずなのにこれはこれで素晴らしかった。

いったん置いといてあらすじから。

 

まず原作版。
リノのクラブで売れない歌手をしているデロリスが主人公。
愛人はクラブの経営者でマフィアのボスであるヴィンス。
デロリスはある夜、 ヴィンスが部下を銃で撃ち殺すところを見てしまう。


警察に駆け込んだデロリスは警部(エディ) にヴィンス逮捕のために協力してほしいと言われ、 裁判の日まで身を隠すことになる。
デロリスが隠れることになったのは修道院だった。
派手で俗に染まったデロリスが厳格なカトリック修道院でシスター のふりをすることになる。
このギャップが面白い。


さて、当然デロリスは修道院の生活に耐えられない。
修道院長との仲は険悪、 修道院の生活なんか耐えられないと何度もエディに訴える。
しかしそんなデロリスに優しいシスターもいる。
パトリックとロバートだ。
二人の優しさがあるためにデロリスは修道院に対して完全に心を閉 ざさない。


規律を重れないデロリスに修道院長は試練を与えることにする。
下手すぎる聖歌隊の指導役を命じたのだった。
聖歌隊にはパトリックもロバートもいた。
デロリスは頭を抱える。
パトリックは歌声が大きすぎるし、 ロバートは全然声が出ていない。
他のシスターたちも下手なのだ。
ところがさすが歌手のデロリス。
聖歌隊を指導するとシスターたちはめきめき上達していった。


日曜日のミサ。
聖歌隊が歌い出すと修道院長も神父さまもびっくり!
あの聖歌隊が素晴らしい声で歌い出した。
指揮はデロリスだ。
修道院長は一瞬デロリスを見直すが、急に転調。
聖歌をポップに編曲したものを聖歌隊がノリノリで歌い出す。
修道院長は唖然とするけど神父さまは楽しそう。
ガラガラだった教会には音楽を聞きつけて若者が入ってくる。
「敬虔なカトリック信者が減った」 とぼやいていた神父さまは聖歌に導かれて柄の悪い若者が教会に入 ってきてくれたことが尚更嬉しい。


修道院でデロリスが受け入れられていくほど修道院長の居場所はな くなっていく。
この対比は切ない。
修道院を守らなければならないという修道院長も、 近隣の人々のために教会をひらくべきだというデロリスも両方正し い。
それでも賛同されるのは長く修道院を守ってきた修道院長ではなく 新入りのデロリスなのだ。
この時の修道院長の孤独の表現も上手い。
ある日、デロリスはエディから「 裁判の日がはやまったので修道院を出てほしい」と言われる。
あれほどまでに願ったはずの日が来たというのにデロリスは嬉しく ない。
同時期に修道院長は修道院を去ろうとしていた。
デロリスは「自分が出ていくから」と修道院長を引き止める。
相いれないはずの二人の関係性が少しだけ変わっていることがわか る。


デロリスがヴィンスの部下に誘拐されると、 修道院長はデロリスを救出するためにシスターたちを率いてリノの クラブに乗り込む。
ヴィンスがデロリスに「聖職者になったのは服装だけ」 と言って銃を向けた時、 修道院長は声を張り上げてそれを否定する。
ヴィンスは修道院長の「彼女は立派な修道女です」 という言葉を聞いて引き金をひくのをためらった。
悪役にも神様がいるのだ。
ここすごく深いと思った。
その隙をついてエディがヴィンスに発砲。
ヴィンスは逮捕される。
捨て台詞を吐くヴィンスをデロリスが呼び止める。
何かひどい言葉を言うのでは、 というシスターたちの緊張が走る中、デロリスは言う。
Bless you.
こんな完璧な構成ある?


後日、聖歌隊は法王の前で聖歌を歌うことになる。
もちろん、デロリスが指揮するノリノリの聖歌だ。
満杯の教会。
法王のスタンディングオベーションで終わる。


以下、原作とちょっとだけ違う舞台版。
舞台版ではエディのキャラクターが原作よりコミカルになっている 。
警部なのに銃を扱うことが怖いという設定だった。
またデロリスとは高校の同級生で、 いじられキャラだったエディは歌の上手いデロリスを密かに慕って いた。
舞台版のオリジナル要素も面白い。
全体的に成長物語としての色が濃くなっている。
エディはデロリスを守るために発砲し、ヴィンスの逮捕に成功。
「いい子」で過ごしてきたロバートは「デロリスは歌わない」 という修道院長に「一緒に歌いたい」と自己主張をする。
修道院長はデロリスに出会って考え方のまったく違う人間を受け入 れることを知る。
いうまでもなくデロリスは修道院での生活を通して人として成長す る。
そしてサブストーリーとしてデロリスとエディの恋が実る。
なんて贅沢なエンタメ!
これを上質な歌・ダンス・お芝居・ 舞台セットで上演するんだからチケット代1万円じゃ安すぎる。
すごくよかった。

あと修道院長が原作のイメージ通りすぎた。

歌まで上手いんだから本当すごい。

と思ったら宝塚の元トップスター鳳蘭さんだった。

どーりでお芝居から歌まで最強に上手いわけだ。


最後に。
第2幕のロバートのソロで涙が止まらなかった。
私は10代の頃に規律の厳しいミッションスクールに通っていて、 ロバートがその頃の自分に重なった。
「 指輪もつけてみたかったしドレスも着てみたかったし男の子と恋を してみたかった」 と歌うロバートが私の心の一番深いところに触れてきた。
それでもロバートは修道院の壁の中にいることを望む。
それくらい何かを愛している。
それは神さまだったり、他のシスターだったり、修道院だったり。
その純な気持ちが痛く刺ささる。私に。
そうだ、私はあの窮屈なミッションスクールが大好きだった、 そんな気持ちを思い出さずにはいられない。
ロバートの衣装が私の通っていたミッションスクールの制服にそっ くりだった。
私はあの制服を着ていた間、 シスター見習いみたいな存在だったのかもしれない。
そんな魔法の時間はもう10年以上前に消えてしまった。
私にも、ロバートのような少女時代があったのだ。
苦しくて輝かしい時間だった。
戻れるならもう一度見たい日常で、 だけど永久に失われてしまったからこそ日々輝きを増す思い出でも ある。
そんな宝物が私の中にあるということを自覚させられる素晴らしい 舞台だった。


カーテンコールでダンスの振付を教えてもらって観客もみんなで踊 るのも盛り上がった。
観客のノリがいい舞台ってめちゃくちゃ楽しい。
ムーラン・ルージュ」 もノリよかったけど踊れるからそれ以上だった。
ダンス習ってるのに振り覚え悪いから私はめちゃくちゃに踊ってた けどめっちゃ楽しかった。
また行きたい。