劇団四季「ヴェニスの商人」を見て

劇団四季ヴェニスの商人」(2004年)。

劇団四季の作品にしては珍しくDVDが発売されている。
シャイロックは悪役ではないという新解釈版。

浅利慶太演出。

このDVDの何がすごいってキャストの足音まで収録されていることですね。(着眼点)

あとマイク見当たらないんだけどこれ地声でやってる舞台?

いやさすがにそれはない?どういう技術?


原作はシェイクスピアヴェニスの商人」。
シェイクスピアってなんかあんまり好きじゃないから全然読んでない。
ロミオとジュリエット」なら宝塚で履修済だけど「 ヴェニスの商人」に関しては全然知ら……え……知ってる…… なんで?いつの間に?
こういうことが起こるので巨匠はすごい。


ヴェネツィアには一度行ったことがある。
とにかく路地が入り組んでいるので迷ったらとりあえずサン・ マルコ広場を目指すことになる。
サン・マルコ広場には翼のはえたライオンの石像があるんだけど、もうこれ物語の中みたい。
獅子は聖マルコのアトリビュートなんですよね。
西洋絵画に描かれる聖マルコのそばにはさりげなく獅子が描かれる。
その獅子がそばにいる聖人のことを「これ、聖マルコだよ」 と鑑賞者に教える役割を担うのだ。
翼の生えたライオンの背に乗って少女が冒険するファンタジー小説 (カイ・マイヤー「鏡の中の迷宮」) が小学生の頃大好きだったんだけど、 あれは聖マルコのアトリビュートから着想したんだなと大人になってから気付いた。
そのヴェネツィア
ヴェニスの商人」はヴェネツィアの古い時代の話だ。
いいなぁ。

 

あらすじに入ろう。

アントーニオは親友バサーニオの恋を応援するためにシャイロックに借金をする。

アントーニオはシャイロックが嫌いだが親友のために仕方がなかった。

シャイロックはアントーニオにお金を貸す代わりに期日までに返さなければ肉1ポンドを切り取らせてもらうと言う。

アントーニオは親友バザーニオのためにそれを承諾した。

バザーニオは愛するポーシャのいるベルモントに赴き見事プロポーズに成功。

プロポーズを受けるポーシャは3つの箱を用意していたが、バサーニオは見事この謎を解くことができた。

ところがアントーニオの船が難破。

アントーニオは全財産を失う。

バザーニオの妻になるポーシャは婚約者の友人を助けるためにヴェニスに赴く。

バサーニオもヴェニスに向かうがポーシャはベルモントにいると思っている。

ヴェニスではシャイロックがアントーニオに「金を返せないなら肉を切り取らせろ」と迫っている。

バサーニオはかばおうとするがどうにもならない。

そこに裁判官として現れたのはなんと男装のポーシャ。

しかし誰もそれがポーシャとは気付かない。

ポーシャは法律に従いアントーニオの肉を切り取るといいとシャイロックに命ずる。

シャイロックがアントーニオの心臓の周りを1ポンド切り取ろうとした時(アントーニオは衣装をはだけさせて胸を晒す。この日のために鍛えたであろう肉体美。いや、見るためのもの、見るためのものなんだけど、いや見るけど、えっ、いいんですか?みたいな気持ちになる。キモいな。代わりに私のこと刺してもらえる?)、ポーシャは言う。

「血を一滴も垂らしてはならない。契約書に書かれているのは『肉』だけだからな。さあどうした?肉を切り取ってみよ」

みたいな台詞。

えっ……一休さん!?

シェイクスピアさん!それ!日本では一休さんです!!!

どこの国にもこういう話はあるんだな〜!と思った。

そして言われてみればこの展開知ってる。

そういうわけでアントーニオは心臓をくりぬかれなくてすむ。

バサーニオはポーシャと結婚し、アントーニオはそのポーシャによって助けられ、ハッピーエンド。

 

この作品の主軸になるのはアントーニオとバサーニオの熱い友情だと思う。

なんだか太宰治走れメロス」みたい。

やっぱり太宰治シェイクスピアの影響受けたのかな。

でもシェイクスピアより太宰治の方が上手いと思う。

走れメロス」の方がハッピーエンド感さらに高いしね。

でもシェイクスピア、教養として全作読んでおきたいかもしれない。

良い作品だった。