赤坂のバーで妹がフルートを吹くという。
「みんな真面目に聞いてるから緊張するんだよね。わかりやすい場所に座って読書でもしててくれる?」
とのことで、妹の演奏を聞き流し読書をする…ことになった。
そういう状況で何を読もうと考えると、カポーティの小説の村上春樹訳かなと思う。
気取りすぎ?
(海外文学はあんまり良さわからないけどトルーマン・カポーティ、ジュール・シュペルヴィエル、J・D・サリンジャー、グレアム・グリーンは好き)
てかこれ打ちながら今バッグの中確認したらなんか間違えて山本周五郎「さぶ」持ってきてた。
うける。周五郎読むわ。
まずコンサートに行く前にジャズダンスのレッスンだけは休みたくなかった。
アラビアンの最終回だし、何より先生からお菓子もらう約束してるから。(子供か)
ということで仕事→ジャズダンス(90分)→妹のコンサートのハードスケジュールを組むことに。
先生からはビスキュイテリエブルトンヌもらった!!
センスよすぎ!!!
私このダンス教室でよかった。
で、音楽の話。
妹は7歳からフルートを吹いている。
私もずっと練習を聞いていたので大人になった今もたとえカルテットであってもどの音が妹の音かわかる。
同じ楽器を吹いていても音に個性があるのだと実感できて面白い。
今日はフルート2ピアノ2だけど。
第一部
1曲目、花のワルツ(ケーラー)。
フルート二重奏。
妹が低いパートだった。
妹の友達が上パートなんだけど上パートも聞き覚えがある。
両方吹けたんだ?
私の妹はとにかく肺活量がすごい。
だから肺活量の少ない上パートの人の方が繊細な吹き方をしているように感じる。
コンクールだとどちらが審査員の好みかみたいなことで受賞者が決まるんだろうな。
それにしてもダイナミックさと繊細さの両立って難しそう。
2曲目、2本のフルートのための協奏曲 第1楽章(チマローザ)
チマローザ好き。
古典派→バロック時代(貴族が貴族のためにつくる曲)→大衆音楽。
バロックの特徴が濃い曲らしい。
宮廷でこういう音楽を貴族たちが聴いていたのかなぁと思いながら聴くの楽しかった。
貴族が貴族のために演奏した音楽が現在の日本にも残ってるなんて感慨深い。
この曲、ピアノ演奏も好き。
2本のフルートの伴奏だけど3人で1曲を作ってるという感じでちゃんとピアノにも見せ場が用意されている。
小さな舞台みたいでいい。
ピアノ独奏。妹の出番なし。
ドビュッシーがモネ(印象派)の影響を受けて作った曲だから全体的にぼやけている。
聴いた後はワインが美味しくなるらしい。
ワイン頼めばよかった。
4曲目、「3つの小品による組曲」より アレグレット(ゴダール)。
妹のソロ。
走り出した幼い女の子を「まってまって」と捕まえにいくイメージで演奏するらしい。
「私も音を捕まえにいきます」と言って吹き始めたのがよかった。
曲に入っていける気がする。
アレグレットってあんまり有名な曲じゃないんだ?
妹が小さい頃からよく練習していた曲なので大人になってからバーで聴くとは思わなかった。
5曲目、花は咲く。
フルート独奏。妹の出番なし。
100年後、震災を知らない人が聞いても何かを感じられるようにという曲。
吹きこむ息が優しい。(妹と比べてしまう)
6曲目、見上げてごらん夜の星を(ボサノヴァバージョン)
身内の演奏を評価するの難しい。
妹の演奏は音が大きいのがいいのと高音が上手い。
これ間違えてない?って時も直後に「あ、そういうテクニックか」ってなる。
間違えてんのかな?
だとしたら誤魔化すのうまい。
第二部
「音楽を始めたきっかけは?やめたいと思ったことないの?」と酔ったお客さんから質問。
妹がフルートを始めたのは小1で、その頃の妹には犬猿の仲の同級生がいた。
「そんなこともできないの?」と煽られて妹はその子を殴り倒してしまう。
この事件をきっかけにうちの両親は妹にフルートを習わせようと決めたのだった。
フルートを習ってる7歳児ってそういないので、何か言われても「私にはフルートがある」と思えれば同級生を殴らなくて済むだろうという算段である。
小1の入学式で同級生殴り倒した話ここでするんだ?と思って笑ってしまった。
「ぶんぶんぶんはちがとぶ」を泣きながら演奏した時はさすがに辞めたかったらしい。
「でももう体の一部だからやめられない」と言っててその気持ちはわかるような気がした。
私にとって身体の一部になってしまったものは小説なのだと思う。
1曲目、四季のぽぷり(中山育美)。
日本歌曲のエモさが詰まった曲。
エモってなんでも言うと語彙力なくなりそうだからやめようと思う。
なんだろうね、この場合のエモって。をかし?
いとをかしきメドレーでござったな。
中学の時お琴でやった「桜」をピアノとフルートで吹いてて斬新に感じた。
「さくら〜さくら〜」が「778〜778〜」にしか聞こえない。
てか最後の方もしかしてタンギング使ってた?
あれどうやって吹くの?
明らかに普通の息の使い方じゃなかった。
あとで聞こうかな。
2曲目、春よ来い(松任谷由美)
フルートとピアノ。妹は出番なし。
ネットで歌詞調べて追いながら聴いた。
切ない音が素敵だった。
よく知らなかったけど歌詞いいな。
流行曲とか名曲の歌詞って片っ端から調べたらそれの刺激だけで小説書けそうだよね。
行き詰まったら一度やってみようかな。
ピアノソロ。妹の出番なし。
波に合わせて歌う感じらしい。
ショパンの不安定な心の揺れを表現しているのではないか、と演奏者の方は考えているそうで、それを表現した演奏となった。
「舟歌」はショパンが恋人との別れと肺結核(当時は不治の病)で絶望してた頃に作った曲だそう。
美しいメロディに痛みと孤独が散りばめられる。
なんだか豪華絢爛&劇的な演奏で「美しい」という言葉では弱いように感じる。
言葉の限界を感じる音楽というものがあるんだなぁと思った。
4曲目、パルティータ 第一番(バッハ)。
ピアノソロ。妹の出番なし。
7つの舞曲から成り立つ。
300年ほど前に作曲されたバロック音楽だそう。
当時はダンスが上手いとモテたとか。まじか。
ダンスが上手いと「かっこいい!」と思われたから舞曲が作曲されたのかな、と演奏者は考えているそう。
うん、ダンサーは現代でもめちゃくちゃかっこいいよ。
300年前のダンスってどんな感じだったのかな。
私が毎週踊ってるマイケル・ジャクソンも300年後にはピアノの楽譜になっててスリラーを演奏するピアニストがいるのかしら。
席がよかったのでピアノの手元がよく見えた。
鍵盤の上を指が踊るみたいに飛び跳ねるのがいい。
この見た目も意識してダンスの曲を作ったのかな。きっとそう。
たしかパルナッスム博士だっけ?
右手で旋律を弾きながら左手の指で右の指の隙間を突く弾き方、そういうのがあるとは聞いたことはあるけど初めて見た。
5曲目、シシリエンヌ(フォーレ)
妹のソロ。
禁断の恋に落ちた2人が湖のほとりにいる曲。
なんだかギリシア神話チック。
幻想的でミステリアスな始まり方をする。
むかしむかしあるところに……みたいな雰囲気。
小学生の頃から何度も聞いているはずなのにこういう感想を持つのは始めてかも。
6曲目、協奏的三重奏 第一楽章(クーラウ)。
フルート二重奏かつピアノの見せ場も多い作品なのでかなり装飾的で華やか。
なんだかんだ本を読む隙がない。
聴き入ってしまう。
7曲目、ピアノ連弾「くるみ割り人形」より花のワルツ(チャイコフスキー)。
ピアノ連弾のため妹の出番はなし。
何百年前の人も同じ曲を聴いていたのだと思うとなんだか壮大な話だなと思う。
これを聴きながらお酒飲んでご飯食べられるのは贅沢。
今更思ったけど連弾を前提に作曲するって割と気が狂ってるよね。
人間腕2本しかないのに4本ならこれだけ弾けるみたいなこと考えたわけでしょ?
あーでも素敵だな。
こういう狂気は忘れずに創作したい。
演奏が終わった後、バーを出ようとしたら妹に捕まって第一声「私の演奏よりピアノが好みだったでしょ」。
なんでわかったんだ。
「あの席は鍵盤がよく見えたからそちらにばかり目が…」と言い訳を重ねて仮説を補強してしまった。
いやでも久しぶりに妹の演奏を聞けてよかった。ほんとに。
次のコンサートも絶対行きたい。
あと音楽ちゃんと勉強してみたいと思った。
シシリエンヌみたいに物語性の強い音楽もあるし、ショパンとかバッハが作った曲と歴史の関係性とか調べたら絶対面白いだろうな。
音楽と物語は密接に結びついていると思う。
ミュージカルだってそう。
逆にいつから小説とミュージカルは別物になったんだろう。
音楽、ダンス、歴史、全部好きだし体系的に結びつけた小説があったら読みたい。
論文なら探せばありそうだけど小説はないかな。
まずは論文から読むか。
音楽聴きながら食べたレッスン後のグラタン美味しかった。