「天空の城ラピュタ」を見て

初見は物心つく前。

始まり方よくわかってなかったけどナウシカの不穏さにも似た物騒な展開だった。

シータは家宝として持ってる飛行石を狙われてムスカに誘拐されてるところだし、そこにシータにとって第2の敵であるドーラが襲撃してくる。

シータはどさくさに紛れてワインボトルでムスカを殴って気絶させたあと飛行船から転落。

ドーラたちはシータのことなど気にせずシータの持つ飛行石のことばかり話してるから、ドーラたちはシータの仲間ではないし助けに来たわけでもないことがはっきりわかる。

怒涛。

でも「え、え、ちょっとまって。は?」ってならないからすごい。

ちゃんとついていける。

 

一方…という感じでパズーが登場。

本日残業とのことで間食にミートボールを買ってる。

子供の頃毎日パパとママが難しい顔して「残業残業」言ってて、どういう意味かわからないけど大人の世界の言葉だなって思ってたから私と同じ子供のパズーが「残業」という言葉を理解して使っていたのがすごく大人っぽくて羨ましく見えた。

大人になったら残業なんかやりたくなくてもできるのに子供の視点って斬新〜。

てか子供に残業させるな。

それSDGsじゃない?

SDGs的にアウトじゃない?

質の高い教育をみんなに。

誰かパズーに教育を!

その後パズーは飛行石の力を過信して高いとこから飛んで落ちて煉瓦造りの屋根に死んだかと思うような穴開けたのに片付けるでもなく後悔するでもなく笑ってシータに「あっちで顔洗って〜!タオルもあるよ!」とか言う。

フワちゃんの血の継承者か?

破天荒すぎて爆笑してしまった。

友達になりたい。

 

場面が代わり、ドーラたちがシータを探しにくる。

逃げた先にムスカの仲間が。

パズーはすぐシータの敵がドーラたち海賊だけではないことを理解する。

パズー、機転がきくしコミュ力高いし勇敢で優しい。

ジブリ男子イチのイケメンはポルコだとおもってるけどパズーもいいな。

教育受けてないとか言ってごめん。

SDGsだけが正義じゃない。

 

炭鉱に降りた2人はラピュタと飛行石の関係を知る。

パズーの父が見たという天空の城はシータの持つ飛行石という石の不思議な力によって天に浮いているのだった。

そしてシータは飛行石とともに母から「ラピュタ」の名を継いだことをパズーに打ち明ける!

このシーンめちゃくちゃワクワクする。

嘘つき扱いされた父の汚名返上のため天空の城を探すパズーと、その天空の城の名前を持つシータの邂逅。

 

シータが秘密を打ち明けると同時に2人は軍隊に捕えられた。

ムスカからラピュタの真実を聞かされるシータ。

ラピュタは圧倒的な科学力で天空に浮かび地上の国を支配する王国で、シータの正体はラピュタの王位継承者であるリュシータ王女だった!

シータはムスカのいる軍に従い、ラピュタの調査に協力することになった。

パズーとさよなら。

 

しかしパズーが家に帰ると海賊ドーラたちが食事中!

ドーラ「金であの娘を売ったか。お前を助けるためにつれない態度取ったに決まってるだろうが。(息子たちに)嫁にするならああいう子にしなよ」

この場面でドーラとパズーの緊張関係が急にゆるむ。

エンタメでよくある「敵だった人が仲間になる展開」だ。

ハウルの動く城」でも荒地の魔女がこのドーラ的な役を担っている。

でも「ハウルの動く城」では「荒地の魔女が味方になるのは違うと思った」って言う人いるけど、「天空の城ラピュタ」の「ドーラたちが途中で仲間になるのはおかしい」って言う人いなくない?

この違いってなんなんだろう。

比較して考えてみる。

荒地の魔女は弱体化して、主人公サイドがそれに情けをかけた形で仲間になった。

対してドーラは弱体化していない。

パズーは家の柱にくくりつけられているからむしろ主人公サイドの方が弱い。

パズーはドーラを仲間にするのではなく「仲間にしてくれ」と頼んでいる。

ドーラはパズーを仲間にするメリットを感じてOKを出す。

(パズーを仲間にしておけば飛行石を扱うのに必要なシータがいうことを聞いてくれるかもしれないため)

こう考えると、敵が味方になってくれる場面は敵側が弱くなって主人公が敵を従えるという形より、主人公サイドが弱く敵に従う形の方が展開に説得力が出るのかもしれない。

 

パズーはドーラたちとともにシータの救出に成功!

しかし救出前にシータは飛行石を落としてしまい、飛行石はムスカの手に渡る。

飛行石はラピュタの方向に光を放つ。

 

ラピュタの正体を知りたいというパズーとシータはドーラの海賊船に乗る。

飛行中の家事全般を2人が担うという条件付きなのでドーラの息子たちは大喜び。

「無条件で仲間にしてもらえるわけではない」ことは大事なポイントそう。

ハウルの場合は荒地の魔女を交換条件なしで許して信頼してしまったから物語のリアリティが緩んでしまったのかもしれない。(原作では荒野の魔女は改心しない。でも代わりに荒地の魔女と契約した悪魔が人間の姿をしているという設定の解説があり、荒地の魔女亡き後もこの悪魔要素の薄い人間と戦闘しなければならないカオス展開なのだ。明らかにジブリ版の方が良い)

話をラピュタに戻そう。

ドーラの率いる海賊たちは財宝を狙ってラピュタを目指す!

 

夜、パズーたちはムスカに追いつかれる。

「飛行技術が進歩しているからいつかラピュタは見つかっちゃう」というパズーの台詞が印象的だった。

設定の開示方法が上手い。これSFなんだ。

そしてムスカのいる軍の飛行船の名前、ゴリアテ

ゴリアテ旧約聖書に登場する巨人の怪物だったと思う。

大きくて戦力のある飛行船に命名するセンスが良い。

 

突如現れた「竜の巣」。

パズーは父の話を思い出す。

ラピュタは竜の巣の中にある」。

ラピュタの世界観好きすぎる。

「立派な町だ。科学も進展していたのにどうして」

パズーの台詞いいな。

圧倒的な科学力で天空から地上世界を支配していたラピュタがなんらかの原因で衰退し、町が池に沈んで王宮(?)はツタに覆われている。

なんだか「けものフレンズ」的なロマンがある。

 

ラピュタゴリアテも上陸。

ムスカは飛行石の力を使ってラピュタを取り巻く雲を払ったらしい。

シータが捕えられてしまう。

ムスカは軍の無線機を全て壊したことでスパイ容疑をかけられ軍から追われる。

王族しか入れないというラピュタの深奥にムスカとシータは入り込んでいく。

木の根をかき分けていくとそこには巨大な飛行石がある。

ムスカの本名はムスカ・パロ・ウル・ラピュタ

もともとシータと同じ王族だったのだ!

地上に降りてから血筋が2つに分かれたらしい。

旧約聖書のソドムとゴモラを滅ぼした火がラピュタの砲撃らしい。

天からの硫黄と火で滅ぼされた都市。

ヤハウェ(ユダヤ教の神)の裁きらしい。

旧約聖書ネタ、ゴリアテだけじゃなかった!

 

パズー、死ぬ覚悟でシータと共に滅びの呪文「バルス」を唱える。

ラピュタは全壊せず、王宮だけを残して空高く上昇していく。

ラピュタを築いた人々がいつかラピュタを戦艦として使う人間が現れることをおそれてこの仕組みにしたんだろうな。

王宮の庭ではあのロボット1機が花を摘み、鳥と戯れる日常の継続が約束される。その描写。

パズーもシータも無事に帰って来られる。

海賊たちとは楽しそうにさようなら。

 

傑作だった。

見終わった瞬間2度目が見たい。

物心つく前からこんな上質なエンタメに触れてたなんて贅沢すぎる。

SFってあんまり読んでないけど名作は田中芳樹銀河英雄伝説」とか筒井康隆「パプリカ」のイメージで、専門知識をつけて世界観を作り込まなければ書けないと思ってた。

天空の城ラピュタ」は結構サイエンスの設定ざっくりしてるけどそれでも面白い。

SFってこんな感じでもいいんだ。

書いてみたいな〜〜〜。